晴れ、時々、運命のいたずら
所属事務所であるゴールドプロモーションを初めて訪問した夜。
8階建てマンションの3階。
2LDK。
オートロック付きで、ロビーには管理人も常駐している。
直美が手配してくれたマンション。
今日から千夏と有紗は2人でここに住む事になった。
「有紗…、大丈夫?」
1つの部屋に並んで布団を敷き、仰向けになって天井を見つめながら千夏が有紗に話しかけた。
「大丈夫って何が?」
「小学生の時、アイドルへと誘ってくれて住居まで用意してくれて、直美さんには本当にお世話になっていると思ってるの。」
「…。」
「でもね、何だかここまでされると逆にプレッシャーと言うか…。」
「母さんがプレッシャー感じてどうするのよ。」
「だってね、もし、もしも、よ。」
「うん。」
「有紗がアイドルとして1人前になれなかったら…。」
一旦言葉を区切る。
「母さん、こんなにしてもらったのにどうしたらいいのか…。」
言葉に不安を感じ取れる。
千夏の言葉を聞きながら、有紗は自然と笑みをこぼした。