晴れ、時々、運命のいたずら
30分のイベントが無事終了した。
愛姫がステージ上から笑顔で手を振ると、たくさんの観客が同じように手を振って見送ってくれた。
「お疲れ様でした。」
「ありがとうございました。」
裏の控室でスタッフ全員で労をねぎらう。
「もしお時間あるようでしたら、少しゆっくりして行って下さい。」
スタッフの1人が麦茶を片手に気を使ってくれる。
「ありがたいのですが、あまり時間がないのですぐに着替えさせてもらってもいいですか?」
普段着に着替え、帽子を被りマスクをする。
スタッフにお礼を述べてから、すぐに控室から飛び出した。
自分が立っていたステージにキャリーバックを引きながら少し足早に向かう。
まさか、先程までイベントをしていた愛姫が、マスクをして普通に歩いているとは思わないのだろう。
誰も声を掛けてこない。
(イベント中は見かけなかった…。)
ずっと、見渡していた。
どれだけ会わない時間があったとしても、見つける自信はある。
(翔太…。)
翔太の姿を見かけなかった。
『高崎、必ず行くよ。』
(約束してくれた。迎えに来てくれるって。)
自然と焦る思い。
歩くスピードが徐々に早くなる。
(すぐに行くから。待ってて…。)