晴れ、時々、運命のいたずら



穂乃花は席を立つと、そのまま一番近い出入口から外へ向かった。


愛姫のイベントを観客の最後の1人が立ち去るまで見届けた後、ショッピングモール中をひたすら歩き回った。


一軒一軒、店の中も覗き込んだ。


あまり歩き過ぎても、と思い、一番人の多い通路で暫く立ち止まったりもした。


しかし、そのどれも成果はなかった。


外へ出てため息をつく。



(来てくれなかった…。)



結局、稔の姿を見つける事は出来なかった。


会えなかった。



(もう…。)



後悔がこみ上げる。



(2度と会う事はないんだよね…。)



最後の日。


校門から去っていく稔に声を掛けた時。



(せめて、はっきりと自分の口で思いを伝えておけば良かった…。)



俯きながらバス乗り場へと歩き出す。



(仕方ないよね…。)



全ては自分のふがいなさ、勇気のなさが生み出した結果だと感じる。


一度立ち止まり、顔を上げて空を見上げる。


少し赤みがかっている空。


その空を横切る3匹の燕。


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