晴れ、時々、運命のいたずら



「はぁ、はぁ…。」



イベントを行った広場に戻ってくるが見渡す限り、誰もいない。


ステージもスタッフの手によって片付けられており、買い物客が数組くつろいでいる姿が見えるだけだ。



(翔太…。)



信じている。



(来てくれていたよね…。)



『高崎、必ず行くよ。』



見つける事が出来なかった自分に悔しさがこみ上げてくる。



(翔太…。)



よろよろと一番近くのベンチに座り、1つため息をついた。



「私、馬鹿だよね…。」



少し俯いて小さく呟く。


ポケットから黄色いお守りを取り出して握り締める。



『苦しい時、辛い時があったら、このお守りを見て香川を思い出して。故郷は、裏切らないから…。』



(今日、翔太に会えなかった事が、一番苦しいよ…。)



それでも、まだ近くにいるはずだと自分を奮い立たせて顔を上げた。


丁度、目線の先がガラス扉の出入り口で、若い男女が顔を見合わせ、微笑みながら入ってくる姿が目に入った。


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