晴れ、時々、運命のいたずら
「どう?宮城さんとは上手くやっている?」
「はい、でも…。典子さんが私の為に必死にやってくれているのはよく分かっているのですが…。」
言いにくそうに答える。
「宮城さん、かなり走り回ってあなたの為に仕事取ってきているのよ。」
「…。」
「すぐには無理ね。今は愛姫にとっても大切な時期。ソロになってこれからどんどん露出を増やしていかなければならない時期。今は、自分の事を考える時期なのよ。」
直美は再びソファに座り直すと、目の前で伏せている愛姫に向かって顔を近づけた。
愛姫の両手を握りしめる。
「分かって頂戴。あなたの肩にはたくさんの人の思いや希望が乗っているのよ。」
(思いや希望…。)
穂乃花の顔が浮かぶ。
「…分かりました。」
そのまま立ち上がると、軽く頭を下げて社長室を出ようとする。
「体調は大丈夫?」
後ろから声を掛けられたが、何も言わずもう一度頭を下げて扉を開けた。
(分かってる。分かってるけど…。)
頭の中では自分の今の立場は十分に分かっているつもりだ。
(けれど…。)
はっきりとした答えを見つける事も出来ないまま、社長室を出て事務スタッフがデスクワークしているフロアの脇をトボトボと歩いて行く。