晴れ、時々、運命のいたずら



『その結果、穂乃花ちゃんを裏切る事になるかもしれない。』



(裏切る…。)



『けれど、それが私の思いであり、答えであり、進むべき道だと信じている。今まで…、富山愛姫をありがとう。徳島有紗。』



(徳島、有紗…。)



穂乃花は暫く画面を見つめた後、そっとパソコンを落として、ノートと筆記用具を持って玄関の扉を開けた。


空を見上げると、鉛色の雲が全体を覆い始めている。


天気予報では夜に向けて雨が降り始めるらしい。


穂乃花は、それでも外へ出て一歩一歩踏みしめるように歩き始めた。


そのスピードは徐々に速くなっていく。


5分後、千曲川の河川敷に辿り着いた。


家を出た時よりも雲が一層厚くなっている気がする。


見渡しても、天気が悪いせいか、散歩やジョギングをしている人をほとんど見かけない。


普段走り回っている小学生達もいないようだ。


そのままゆっくりと川岸に向かって降りて行く。


川のほとりにあるいつもの場所に到着すると、スカートを軽く手で押さえながら腰掛けた。


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