晴れ、時々、運命のいたずら



「はい、ありがとうございました。」



カメラマンと記者が満足そうな顔で指で丸を作る。



「ありがとうございました。」



愛姫も2人に向かって丁寧に頭を下げると、チラリと自分の腕時計に目をやった。



「愛姫ちゃん、ご苦労様。では、このまま次へ行きましょうか?」



典子が平然と答える。



「次って…。」



「実はね、丁度撮影中に未来社の秋田さんから連絡来てね。知ってるでしょ秋田さん?この前のテレビの収録でもお世話になったからぜひ一度食事でも、って言われたのよ。」



「今からですか?」



「そうよ。」



「すみません、典子さん。今日は午後から私、行かなければならないので…。」



「何言っているのよ。これも仕事よ。」



「ですが、先日も今日は午後から仕事を入れないで欲しいとお願いしたはずですけど。」



必死の形相で頼み込む。



「そういえば言ってたわね。でも愛姫ちゃん連れて行くって言っちゃった。ごめんなさいね。」



悪びれる様子もなく典子はタブレットで待ち合わせ場所のルートの検索を始める。



「あ、長崎さん、車こっちに回してくれる?このまま、愛姫ちゃんと秋田さんの所まで行くから。」



(私…、香川に戻りたい。)



両手に拳を作ったまま俯いて必死に涙をこらえる。



(今日しか…、戻る日が無い…。)



午後13時30分。



「あっ、来た来た。さ、愛姫ちゃん、乗って。行くわよ。」


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