晴れ、時々、運命のいたずら



(懐かしい…。)



岡山駅で新幹線からJRに乗り換え、児島駅を過ぎトンネルを抜けると、左右両側に真っ青な瀬戸内海が地平線の彼方まで広がった。


所々に見える島々とポツポツと見える数隻の漁船。


有紗は、湧き出る思いを抑え込みながら、高松へと向かっていた。



(翔太…。)



平日の日中なので車内もそれほど混雑してなく、車内販売のお姉さんと目が合った時にあっ、と気付かれた程度だ。


もう、香川を出て上京してから2年近くになる。


それまでに香川には戻っていない。



(2年もの間、色々な事があったな…。)



思い出される日々。



(私は恵まれていたな…。)



そして…。



(健人君を思う香織。香織を思う島根さん。クラスメイトを思う穂乃花ちゃん。家族を思うお父さん、お母さん、兄さん。そして…、翔太を思う私…。)



皆、愛に生きてきた。


< 288 / 313 >

この作品をシェア

pagetop