晴れ、時々、運命のいたずら
「じゃあ、母さんは先に帰るから。」
「わたくしは、一度事務所に戻りますので。今日は初対面ですし、お2人で少し時間を取っていて下さい。」
スタジオの前で千夏と島根を香織と共に見送り、再び休憩室に戻った。
まだ、他のアイドルの卵達はダンスレッスンやボイストレーニングをしているようで、休憩室は香織と愛姫の2人だけ。
香織は椅子に座ると鞄から携帯を取り出し、愛姫に目を向ける事無く触りだした。
向かい合って座っているが、香織が愛姫を無視するかのように携帯に夢中の為、沈黙の時間が続く。
「あの…。」
我慢しきれずに愛姫が話しかけた。
「何?」
(えっ!?)
先程、千夏や島根と一緒に話していた口調と全く違う、素っ気ない返事が返ってくる。
「先に言っておくけど。」
「はぁ。」
「香織は、あんたみたいな田舎者と組まなくても1人でトップになれるんだから。」
携帯から目を離さないまま、冷たく言い放つ。
「そんな言い方って…。」
「いい?」
初めて愛姫に顔を向ける。
その顔に愛想の良い、可愛い笑顔は全くない。