晴れ、時々、運命のいたずら
一軒家と田園が適度に点在する中にある中学校。
真っ白な鉄筋の校舎の遥か後方には篠山、小坂山と言った、長野の山々が鮮やかに連なって見える。
「えー、みんな静かに。」
男性の担任の声が響き渡る。
外からの日差しがかなり厳しくなり、汗ばむようになってきた6月。
「今日からこのクラスに転校生が入る事になった。」
「えっ!?」
「男子かな?女子かな?」
「どんな子だろう?」
前後左右の席同士でクラス中コソコソとざわつき始める。
「静かに。よし、入ってこい。」
担任の一言で教室の扉が開き、小柄な女子生徒が少し俯きながら入ってきた。
「女子だよ。」
「ラッキー。」
男子生徒達は女子が1人でも増えた事がとても嬉しいようだ。
教壇の後ろで担任の隣に並ぶと、ゆっくりと顔を上げた。
ポニーテールで髪を束ねていて少し丸い輪郭。
目元ははっきりとしているのだが、少し暗い雰囲気を出している。
「あの…。」
ボソボソと話し出す。
「宮崎。もっと大きな声で。」
「はい…。」
担任に促されて、深呼吸を1つして再び自己紹介を始めた。
「北海道から転校して来ました、宮崎穂乃花(みやざきほのか)と言います…。」
「すみませーん。後ろの席、全く聞こえないんですけどー。」
一番後ろの席に座っている男子生徒が手を上げて叫ぶ。
「まぁ、初日だし慣れてないから仕方ないか。みんな、宮崎さんだ。よろしく頼むぞ。」
担任が代わりに説明してくれたので、穂乃花は小さく頭を下げた。