晴れ、時々、運命のいたずら
「今から島根と共に軽井沢に行ってもらうから。」
ゴールドプロモーションの社長室。
愛姫は、香織と共に社長の直美に呼び出されていた。
背後にはマネージャーの島根が立っている。
「あなた達がこの1年間、レッスンをしっかり頑張ったお陰で、ようやく来月デビューする事が正式に決まった。香織、デビュー曲のタイトルは?」
急に尋ねられた香織は少し首をかしげている。
「えっとー、何だったかなぁ~。」
「愛姫、タイトルは?」
「私の彼、です。」
「香織、タイトルくらい覚えておきなさいよ。」
「ごめんなさーい。」
軽く頭を下げた香織だったが、愛姫には小さな舌打ちが聞こえた。
「2人にとって初めての仕事だから、しっかり頑張って来てね!」
直美に激励され、島根が運転する車で軽井沢へ向かう。
軽井沢へは渋谷にある事務所から、首都高速、上信越自動車道等を通る。
「おい、田舎者。」
後部座席で香織が厳しい口調で愛姫を呼ぶ。
「何?」
「デビュー曲くらい先に教えてよね。香織が恥かいたじゃない。」
「そんな事…。」
香織は大勢の前では愛姫の事を愛姫ちゃん等と愛想よく話しかけてくるが、普段は相変わらず見下したような言い方をしてくる。
始めのうちは2人だけの時だったが、いつの間にか島根と一緒にいる時も冷たく愛想無く接していた。