晴れ、時々、運命のいたずら
「ねぇ、島根。軽井沢までどれくらいかかるの?」
「2時間少し、です。」
運転しながら答える。
「えーっ、そんなにかかるのぉ。何でそんな遠い所までわざわざ行かなきゃならないのよ。」
「Shipとしての初めてのお仕事ですから、我が儘言わないで下さい。」
「そうよ、仕事を頂けるだけありがたいと思わないと。」
愛姫が口を挟むとすぐに香織はキッと睨んでくる。
「田舎者の上に優等生気取り?」
「その田舎者って言い方、何とかならないの?」
「田舎者に田舎者って言って何が悪いのよ。香織はね、仕方なくあんたと組んでやってるんだからありがたく思いなさい!」
「香織さん、口が過ぎますよ。」
島根の忠告も無視して香織はぷいっと顔を背けた。
愛姫もまた窓の外を眺める。
高速道路はかなり空いており、順調に軽井沢に向かって進んでいる。
(初めての仕事…、デビュー。)
故郷のまんのう町から東京に出てきて1年。
毎日毎日朝から夜まで歌に踊りに必死に頑張ってきた。
母親の千夏や社長の直美、マネージャーの島根にも助けられた。
パートナーの香織は相変わらず不愛想で冷たいが、それでもいつか分かりあえる日が来ると信じている。