晴れ、時々、運命のいたずら



「ねぇ、島根。軽井沢までどれくらいかかるの?」



「2時間少し、です。」



運転しながら答える。



「えーっ、そんなにかかるのぉ。何でそんな遠い所までわざわざ行かなきゃならないのよ。」



「Shipとしての初めてのお仕事ですから、我が儘言わないで下さい。」



「そうよ、仕事を頂けるだけありがたいと思わないと。」



愛姫が口を挟むとすぐに香織はキッと睨んでくる。



「田舎者の上に優等生気取り?」



「その田舎者って言い方、何とかならないの?」



「田舎者に田舎者って言って何が悪いのよ。香織はね、仕方なくあんたと組んでやってるんだからありがたく思いなさい!」



「香織さん、口が過ぎますよ。」



島根の忠告も無視して香織はぷいっと顔を背けた。


愛姫もまた窓の外を眺める。


高速道路はかなり空いており、順調に軽井沢に向かって進んでいる。



(初めての仕事…、デビュー。)



故郷のまんのう町から東京に出てきて1年。


毎日毎日朝から夜まで歌に踊りに必死に頑張ってきた。


母親の千夏や社長の直美、マネージャーの島根にも助けられた。


パートナーの香織は相変わらず不愛想で冷たいが、それでもいつか分かりあえる日が来ると信じている。


< 53 / 313 >

この作品をシェア

pagetop