晴れ、時々、運命のいたずら



(翔太…。)



1年前。


町に流れる土器川のほとりで会ったのが最後。



『いつの日か、ステージの上にいる私を翔太に迎えに来て欲しいから…。』



翔太の隣にいて相応しい女性になる為に必死で頑張ってきた。


そして…、ここまでやって来た。


ようやくデビューする事になった。


東京に出て来てから、携帯電話を持つようになったが、翔太には伝えていない。


翔太もまた連絡してこない。


いわば、お互い全く連絡を取り合っていない。


翔太が今どこで何をしているのか全く知らない。


しかし、成功するまではそれでいいと考えていた。



(いよいよデビュー。見ていてね。)



3人を乗せた車は碓井軽井沢インターチェンジを降り、無事軽井沢の公開放送会場に到着した。


車を降りると、島根が真っ先に関係者の元に駆け寄り、名刺交換をしながら頭を下げて回る。


ここでの公開放送はShipだけでなく、Shipのようなデビュー間近のアイドルや歌手を特集する趣旨のようで、明らかに場馴れしていない少年少女達が落ち着きなくオドオドとしている姿が目立つ。


その中でも香織は島根に続いてひたすら笑顔を振りまきながら1人1人と会話をしている。
やはり、子役からこの世界にいる強みだな、と愛姫は改めて感心していた。


< 54 / 313 >

この作品をシェア

pagetop