晴れ、時々、運命のいたずら
東京に出てきてから1年間、ずっと2人で頑張ってきた。
買い物も食事も何をするにもいつも2人一緒。
苦しいレッスンの中でも明るく励ましてくれる母親、千夏。
周りからは良く姉妹と間違われる。
それほど仲が良い。
しかし、まだデビューしていない愛姫は収入がほとんどなく、その為、千夏は毎日1日中パートを掛け持ち働いてきた。
その姿に愛姫もただただ感謝するしかなかった。
「田舎者は、所詮、田舎者なのよ。どれだけ住んでいても慣れない部分はどうしてもあってね。」
「母さん…。」
恐らく、ずっと抱えていた事なのだろう。
愛姫自身も東京と言う大都会にいまだに馴染めない部分は感じている。
いつも香織に田舎者呼ばわりされているが、心のどこかでその通りだと思う時もある。
それだけに、千夏の抱えていた思いは痛いほど感じ取る事が出来た。
「私が…、苦労かけてるもんね。」
俯く愛姫に千夏はううんと首を左右に振った。
「違うの。母さんの我が儘って言ったでしょ。それにね、有紗もこれからは1人で歩いて行かなきゃね。」
(そうだよね…。)
自分に言い聞かせるように何度か頷くと、愛姫は顔を上げて千夏に笑顔を見せた。