晴れ、時々、運命のいたずら
「今まで、ありがとうね。私は香織もいるし、大丈夫だから…。」
「ごめんね…。」
「何言ってるのよ。そうだ!」
愛姫は何かを思いついたように目を見開いた。
「母さん、ずっと働いていたから、東京の事、実は全然知らないでしょ?」
「まあね。」
「最後にさ、どこか行きたい所ってない?折角だから一緒に行こうよ!」
愛姫の提案に、千夏は天井を眺めながらブツブツ呟いている。
「じゃあ、連れて行って欲しい所があるのだけど…。」
「どこ?」
「東京スカイツリー!」
「スカイツリー、でいいの?」
「ええ。」
「分かった。近いうちに行こう!さあ、お腹空いた~。」
「さ、食べて!今日は有紗の初仕事祝いだから!そうだ、久しぶりにビールでも飲もうかなぁ~。」
(今までありがとうね…。)
冷蔵庫へ向かう千夏の背中を見つめながら、愛姫は心の中で頭を下げた。