晴れ、時々、運命のいたずら
「愛姫さん。」
六本木のスタジオで香織と共に打ち合わせをしていた愛姫の元に、遅れてやって来た島根が話しかけてきた。
「事務所に手紙が来ていましたよ。」
「手紙?」
島根から受け取った手紙は2通。
ピンク色の可愛らしい柄が入った封筒と、真っ白などこにでも売っている事務用の封筒。
「愛姫ちゃん、もしかしてファンレター?いいなぁ~。」
香織が羨ましそうに見つめてくる。
普段は田舎者呼ばわりしていても、周りに人がいる時は、愛姫に対して可愛らしく話しかけてくる。
口元は笑っているが目は笑っていない。
いつもの事だ。
ピンク色の封筒は『Ship 富山愛姫様』と、いかにも女の子の、小さくて可愛い文字が書かれている。
白色の封筒は『富山愛姫様』とパソコンで打った文字が刻まれている。
「Shipとしてもまだファンレターが来ていないのに、愛姫さん個人的に来るなんて。良かったですね。」
喜んでいる様子もなく島根は淡々と伝える。
「ねぇ~、香織には来ていないのぉ~。」
少し、膨れながら島根に尋ねる。
「残念ながら、今日はこの2通だけでした。」
(わざわざ、機嫌が悪くなるような事言わなくてもいいのに…。)
島根に対して小さく苦笑いを浮かべながら、香織の舌打ちを聞いてしまう。
これもいつもの事だ。