晴れ、時々、運命のいたずら
天望シャトルで天望デッキへ。
見渡す限り広がる数々の高層ビル、その間を縫うように流れる隅田川に荒川。
「やっぱり、東京は大都会だわ。」
そして、後方に見える立派な富士山。
「富士山まで見えるなんて…。」
天望回廊を歩き、外を眺めながら千夏はただ呆気にとられた。
「ゴールドタワーから眺めたら180度瀬戸内海で180度田んぼだもんね。」
ニコニコと話しかけてくる千夏の横顔を見ながら愛姫は少し切なくなった。
(母さん、本当に香川好きなんだね。本当は東京に来たくなかったんだね。私の夢の為に犠牲にしてくれていたんだね…。)
「どうしたの有紗、俯いてばかりで。折角来たのだから、忘れないように見てないと損だよ!」
「うん、そうだね。」
千夏に合わせるように明るく振る舞う。
そして、一周したのち、天望デッキにあるカフェで休憩しようと言う事になり、腰を下ろした。
「ねぇ、母さん。」
アイスコーヒーを一口飲んで愛姫は自分の鞄から封筒を2つ取り出した。
「実はね、この前の軽井沢の仕事の後に私宛に手紙が届いたんだ。」
「へぇ~。」
「初めてのファンレターだよ。」
中身を取り出し、千夏に渡す。