晴れ、時々、運命のいたずら



「来週には、荷物を片付けようと思っているの。」



「家はどうするの?」



「とりあえず、京子が空き部屋があるって言ってくれたから、坂出に住む事にした。」



「京子おばさんの家、坂出だったものね。」



京子とは千夏の妹で有紗の叔母。


京子も千夏と同じく離婚して、1人で看護師の仕事をしている。


坂出とは香川県坂出市。


香川県北部中央に位置し、瀬戸大橋が繋がる四国の玄関口になっている。



「京子も1人身だから部屋を持て余しているみたい。」



フフフ、と軽く微笑んでアイスミルクティーに口をつける。



「母さん。」



「ん?」



「今更こんな事聞いて悪いと思うけど…。」



「どうしたの?」



「どうしてお父さんと別れたの?」



愛姫が小学1年生の時、両親が離婚した。


愛姫は意味も分からぬまま母親の千夏と2人暮らしになり、今まで一緒にやって来た。



「何なの、急に。」



「いや…、母さんが1人で我慢してくれているのに、私、母さんに何もしてないな、と思って。こんな時、お父さんがいれば違うのかな、って思って。」



父親の事を尋ねたのは自分が母親の気持ちを汲み取れなかった悔しさや申し訳ない気持ちが込められている。



「言ったじゃない。香川に帰るのは私の我が儘だって。有紗が悪いと思う事、何もないわ。」



にこやかに千夏が答える。


< 72 / 313 >

この作品をシェア

pagetop