晴れ、時々、運命のいたずら
JR篠ノ井線稲荷山駅。
2人しかいない小さなホーム。
「松本まで1時間以上かかるけど、のんびり出来るから。」
「…うん。」
稔は穂乃花に向かって笑顔を向けながら話しかけてくる。
「長野の生活には慣れた?」
「旭川も…、少し外れたら山ばかりだから…。」
「そっかぁ。それにしても、今日はいい天気で本当に良かったなぁ~。」
稔が両手を伸ばして空を見上げる。
先日、稔から誘われた松本城。
学級副委員長の美咲に睨まれながらも、嬉しそうな稔を断る事も出来ず、結局連れて行ってもらう事になった。
「北海道はやっぱり1年中寒いの?」
「…。」
少し暗い表情が見える。
「ごめん、やっぱり誘って迷惑だったかな?」
申し訳なさそうに言ってくる稔に穂乃花はふと気づき、顔を上げて笑顔を見せた。
「ううん、迷惑なんて…。誘ってくれて嬉しいよ。」
「なら、良かった。ちょっと無理矢理だったかな?と思って心配していたけど…。」
「どうして…。」
転校初日から疑問に思っていた事があった。
「ん?」
「どうして、千葉君はそんなに優しくしてくれるの?」
伏し目がちに呟く穂乃花に向かって、稔はさらに笑顔を見せた。