カラダ探し~第三夜~

明日香さんだけじゃなく、高広さんまで。


あんなに仲が良かった龍平を覚えていないなんて。











いや……そうじゃない。


龍平の事を忘れたんじゃなくて、知らないんだ。


あの世界は武司さんの意識の中で、武司さんが産み出したもの。


翔太さんも、結子さんもいる。


「大丈夫かい? 柊さん」


ヌッと、私の視界に入って来た不気味な顔。









うわっ!と、心の中で悲鳴を上げたけど……これは八代先生だ。


……あっちの世界の方が良かったなあ。


なんて考えている場合じゃない!


「『赤い人』の……『呪い』を解かなきゃ」


そう呟いて立ち上がった私を、不思議そうな表情で首を傾げた翔太さん。


「留美子、お前何を言ってるんだ? 美雪が今、美子に教えてもらって、美紀の『呪い』を解こうと……」


「違う! 美紀じゃない! 本当に解かなきゃならないのは、美子の『呪い』なの!!」


話しているうちに、この世界での記憶が甦ってくる。


それと同時に、夢でも見ていたかのように、薄れていく今までの記憶。


だけど、忘れてはならない記憶だけははっきりしていて、私がやらなければならない事は覚えている。
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