学園マーメイド
“愛情”、どんな形でも自分を愛してくれていると言う形が欲しい。
それは私も良くあの家に求めていたものだった。
邪険に扱われることに慣れはじめても、どこかで“愛して欲しい”と言う気持ちがあってどこかで“愛したい”と言う気持ちがあった。
だが私にはもうそれさえもなくなり、あそこにあるのはただの無空間。
何の感情も存在しない、箱庭。
痛いくらいにその気持ちが分かってしまう。
「うん。……だから強くなるしかなかったんだね」
「……そう。母の憎しみに気付いた兄達が俺を気遣ってくれるのも気が引けたし、悲しい顔をしていたら天国の母さんにも父さんにも悪い気がして。だから精一杯強がってみせた」
強がるしか、方法が見つからなかった。
きっと陸嵩は根が優しい人間だから、義理の母の冷たい態度にも悪態つく事無く過ごしていたのだろう。
機嫌を伺うわけでもなく、媚を売るわけでもなく、ただありのままの自分でいる事が彼の“強さ”なのだろう。
だから今こうして彼が真っ直ぐで生きていられて、澄んだ瞳の色をしている。
彼は綺麗だ。
「……その、だから。俺の事なんかいいんだけど、……俺は俺なりにもう解決してるからいいんだけど……」
彼は一通り言い終わったのか、今度はそわそわと落ち着きなく体を揺らし始めた。
不思議に思って、今まで空に向けていた目を彼の顔に焦点を合わせる。
陸嵩は瞳を左右上下に動かして、私を瞳に映すとぱちぱちと瞬きを繰り返した。
その後にぐるり、と此方に体を向けてあの澄んだ瞳でしっかりと私を捉えた。
「だからね!…………分かるから、他の人よりも蒼乃の今の気持ち分かるから」
陸嵩の握った手に力が入った。