学園マーメイド
Breath...09


Breath...09



夏は過ぎるのが早い、と言うがそれは本当だろう。
1ヶ月と言う長いようで短い休みは残すところあと1日となっていた。
私はと言うと、午前の水泳を終え、昼ごはんを食べようと寮へ戻ろうとしたところを雪兎に捕まり、それを陸嵩が捕まえ、3人仲良く(と言っておこう)寮でランチタイムだ。


「なんかここで飯食うのもなれたかも」


雪兎がカレーライスを口に運びながら言う。


「いいことですよ」
「なんかお前に言われたくない」
「コンビニで買うのよりもよっぽど栄養あるし、寮に越してくればいいのに」
「共同生活って向いてないからいい。一人の方が楽」
「うわっ、寂しいねえ蒼乃」


それまでのんびりと二人の会話を聞いていたので、いきなり言われて吃驚する。
飲んでいたミルクココアがすごいスピードで腹に落ちたのを確認して、あーそうだね、と軽く相槌を打つ。
会話に参加するよりもこうして二人の会話を聞いていたほうが楽しめるので、そうしたい所だが陸嵩がそれを許してくれないようだ。
じっとりとした目で(私の相槌が気に入らなかったらしい)此方を見ている。


「あー、ラビ先輩はもっと栄養価の高い食べ物を摂取したほうがいいかも……ね」


片言に言葉を発すると、それを聞いた二人が笑い出す。
言葉を選んで言おうとするとどうもお堅い言葉になる。
それが面白いそうだ。
暫く笑っている二人を無視して、口にうどんを運ぶ。


「軽く返せばいいのに、なんでああ言う言い方になるかなあ!あー、お腹痛い」


涙まで流している陸嵩の言葉に雪兎が笑いながら頷く。
それは一番こっちが知りたいわ、軽くってなにをどう軽くしたらいいのかさっぱり分からない。


「つかさ、俺の事“雪ちゃん”でいいって言ってんのに。“ラビ先輩”はさあ、それこそ堅いだろ」


私の雪兎に対する呼び方が気に入らないらしい。
雪兎が急に不愉快そうな声をあげた。
さすがに人前で“雪ちゃん”と呼ぶのは避けたほうがいいだろうと、此方としては考慮したつもりだったのだが、それが彼としてはそう呼んで欲しいらしい。
他人行儀だ、と何度も言われたがやはり“雪ちゃん”だと……、変だ。
陸嵩を見習って“ラビ先輩”と呼ぶことにしている。



< 102 / 282 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop