学園マーメイド

「や、人前はちょっと。二人のときはそう呼ぶよ」
「人前だってそう呼んでいいのに。……なあ、バンビ?」


その問いかけにぼそりと陸嵩が呟いた。


「俺としては、“雪ちゃん”って呼んで欲しくないですけど」


私には聞き取れなかったが、雪兎には聞こえていたらしい。
少し嫌みったらしい顔とねったりとした笑顔が混ざった顔で陸嵩を見ている。


「へえ、はあ、そお。……初ねえ、バンビ」
「……っ!」


私にも聞こえる声で言った雪兎の言葉に、陸嵩が反応に見る見るうちに顔が赤くなっていった。
雪兎は相変わらずニタリニタリ、と気持ち悪い笑みを顔に貼り付けている。


「ラビ先輩、からかうのやめてくださいよ!」


バンビは顔を真っ赤にしながら、少し照れくさそうに頭を掻く。
それが更に雪兎には面白く見えたのだろう、絶えずにニヤニヤと陸嵩の顔を笑う。
こちらとしてはよく分からない話だったのでうどんをまた口に入れて観察する。


「別に隠すことじゃないだろ」
「なんか先輩のは違うんですよ!言い方って言うか……、な、なんか違うんです!」
「へえ、じゃあお前のはどうゆうのだよ?」
「俺は……」


雪兎がニヤついた顔で“俺は?”と同じように繰り返すとムキになった陸嵩が大声を上げた。



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