学園マーメイド
「俺は純粋な気持ちで蒼乃が好きなんです!」


大声で何を言うんだ、こいつは(あり難い事に寮の食堂には私達しかいない)。
危うく口に入れたうどんを吐き出してしまうところだっただろう。


「あ」


虚しい陸嵩の声がもれ、もっと顔を赤く染めていく。
左右上下に瞳が激しく揺れ始めたかと思うと、


「あ、あ……俺、の、飲み物買ってくる!」


そう言って早々に席を立ち、ものすごいスピードで食堂を出て行った。
一方私はと言うと、いつものように“好き”と言う言葉を前にして混乱して硬直。
口元を押さえた状態で固まっていた。
隣からは乾いた笑いが耳に流れてきた。


「おっかしいの。普通にかわせばいいのに」


そう言ってカレーを一口。
そして硬直している私を見て驚いたようだ、水でカレーを流し込むと肩をゆすってきた。


「蒼乃?どした?」
「……雪ちゃん」
「ん?」
「“好き”って何?」


そう言って彼を見ると、彼は少し困ったような妙に納得したような顔をした。
蒼乃はそれでいいよ、そう言って今度は優しく包むような笑顔を見せて髪を撫でてくれた。
まだその意味を理解できずにいる私を陸嵩はまだ“好き”だと言ってくれる。
それがどうしようもなく訳も分からず申し訳ない気持ちにさせるのだ。


こうして私の夏休み最後の日は幕を閉じたのだった。



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