学園マーメイド
「オウエン?」
「そ。あれでしょ、本命って事はそれを勝ち進めば県大会いけて、それを勝ち進めば地方大会になって、それから全国でしょ?そんなでっかい大会なんだから応援しなきゃ」
応援なんてどれくらいぶりだろうか。
兄が生きていた頃は兄が(その当時は大会とかなかったのに)いつも応援してくれていた。
ただ水泳をしている私を兄が“頑張れ”と言って笑ってくれていた。
久々の感覚に心臓がどくり、と音を立てた。
「ラビ先輩も呼んでさ、応援するよ。だから期日分かったら教えてよな。面倒くさいからダメとか言うのなしだから」
小さい子をあやす様に人差し指を立てて言う彼は楽しそうだ。
彼の腕で泣いたあの日から涙腺が弱くなってきてるのではないだろうか。
じんわりと、胸の奥が熱くなって同時に目頭も熱くなった。
「……っ、陸嵩は今度の大会いつ?」
それを隠すように声を出す(上ずってしまったが)。
「俺?俺は、10月にある大会が本命だね」
「じゃ、応援行くよ」
「え!本当に?」
彼は驚いたようだ、バタバタとしていた足がとすんと布団の上に落ちた。
何がそんなに驚かせたのかは検討がつかない。
詮索するのも面倒くさい(自分でも酷いと思う)。
こくりと頷いて欠伸をする。
「ん。1回見てみたかったんだ、陸嵩が走ってるの」
夏の大会は大会日が重なってしまった。
だから彼の本気と言うのをまだ見たことがないのだ。
それはお互い同じだ。
「……うん。俺、すっげえ頑張るわ」
「うん?うん、頑張れ」
嬉しそうに笑う陸嵩が可笑しくて、ふっと笑みを零す。