学園マーメイド
そう言われて、初対面ではないと言う意味が分かった。
確かに同じ中学だったなら1回くらいは顔を合わせていたかもしれないし、もしかしたら会話したのかもしれない。
「ああ、中学」
だか中学時代はただ平凡に過ごして終わっただけだった。
中学でも水泳だけが私の居場所で。
今の私よりももっと感情を隠すのが上手く、周りに壁を作って人を寄せ付けないでいた。
周りに人がいるのがどうしようもなく嫌だった、それが中学の私だ。
今のように嫌がらせはなかったが、暗い子だと言うだけで人は寄り付かないものだ。
だから中学は本当に思い出と言う思い出がない。
「でも、あたし人を助けた覚えがイマイチない」
大体人助けをするような心の清い人間じゃなかったはずだ。
「か、勝手に思ってるだけなんだ。でも、僕はそれで助けられたって思ってて、だから、……園田さんは僕の中でヒーローポジションにいるって言うか、なんていうか」
「あたしが……、ヒーロー」
「う、うん」
少し気になる。
ヒロインポジションではなく、ヒーローポジションと言うところがいい。
守られるよりも守るほうが、どことなくカッコいい。
「あたしが何したの?」
「あ、……その」
「へえ、蒼乃がヒーローね。昇格したな」
しどろもどろしている梅沢の間に、雪兎が茶々をいれる。
「ぼ、僕、こういう性格だから、い、虐めにあってた頃があって」
“虐め”と言う単語に心臓がどきりとしたが、顔には出なかった。
「裏庭で、その……、暴力されてた時に園田さんがゴミ箱持ってやってきて……―――」