学園マーメイド
次の違和感を覚えたのは彼にあった時だった。
光いわく、バンビと呼ばれる彼は部活に参加せず、放課後になると必ず私より先にプールサイドに来ていた。
初めてあった日から3日、彼が現れない日はない。
いつもふわふわとした茶色の髪の毛を太陽の光に反射させながら、ベンチに座ってはただ泳ぎを見るだけだった。


「楽しい?」


そう聞いてみた事があったけど、彼は笑顔を見せて“楽しいよ”と言った。
この笑顔を見て、またしても違和感を覚える。
違和感の理由は分からないけれど、胸に突っかかるのは確かだ。


私が彼を初めて、名前と言うより名称で呼んだのは1週間経った日だった。
相変わらず水の中にいる私と、ベンチに座っている彼。
彼は驚いた顔をして口に出さなくても“どうして”と言いたそうだ。


「友達が、知ってたから」
「…あ、そお」
「なんでバンビ?」


泳いで熱を持った体にバケツの水を掛けながら問うと、バンビは笑った。


「先輩がつけたんだけど、鹿みたいに足が速いかららしいよ」
「ああ、なるほど」
「あとバンビって可愛いけど男の子じゃん?それもあるんだって」


やっぱりそれなりの理由があるんだ、なんて一人で感心していると、少し顔を赤らめながらバンビが頭をかいた。

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