学園マーメイド
“冷たい女”か。梅沢から聞いた“ブリザード男子はカッコいい”と言うあの言葉を思い出し少し不気味な笑みを浮かべていたらしい。
女子の群れから気持ち悪い、と言う発言が聞こえた。
「ブリザード、か」
小さく呟いてみる。
あの頃の自分に教えてやりたい。この感情が面倒くさくて、捨てたくなったりして、でもこの感情が大きなものを与えてくれると。
暖かい気持ちを生み出してくれるのだと(そう、兄がくれたようなあの暖かさのような)。
『園田蒼乃、至急逢坂(おうさか)のいる教官室までくるように』
部活が終わった後、呼び出しをくらった。
逢坂、と言われ最初は誰かと思ったが、すぐに水泳のコーチだと思い出す。
やはり人の名前を覚えるのは苦手だ。
制服に着替え、部室を出て急いで教官室へ向かう。
コーチが明日出張するため、メニューと後は大会についての話だけで終わった。
「失礼しました」
一礼して教官室を出る。
もらったメニュー表を見て、後で自分でメニューを増やしておこうと思った。
“多くするな、それが一日分の課題なんだからな”と言われていたが気にしない。
体力が有り余ったまま終わるより、燃焼しきったほうが寝やすい。
そうと決まれば、帰ってご飯を食べて寝よう(今日はどんぶり系だったな)。
寮に帰ろうと、部室にある鞄を取りに行こうとした時だった。
バスケ部の部室の前を通りかかったとき、聞きなれた名前が聞こえてきた。
『ちょ……、光!……ふざけ……るの?』
全部までは聞き取れなかったが、“光”と言う名前ははっきりと聞こえた。