学園マーメイド

無表情で彼女を見つめていると、彼女が急に顔をあげた。
視線がぶつかる。
痛々しい、憎らしいような瞳を向けてきた。

――――心臓が大きい音を立てた(痛い、重い)。


「自分ばっかいいとこ取りして!バンビ君だって狙ってた人いっぱいいたのに、それまで接点がなかったあんたとばっか一緒にいるし!あんたが全部悪いんだ!」


痛い、重い。
はっきりとそう思った。


「……それに……、あたし言ったよね?あんたに“好きな先輩がいる”って!その先輩の名前も言ったはずだよ。塚田雪兎先輩ってね!……それなのに、……それなのに!ラビ先輩まであんたに構うようになったじゃん!」


感情が邪魔だと、そう思いたかったのに。
この感情を捨ててしまってはいけないのだと、もう一人の自分が呟いた。
彼女は瞳に涙を溜めていた。苦しそうに顔を歪めて、恨めしそうに私を見る。
拳を握り締め、歯を食いしばる。
その表情を私が作っている。

――――ズキリ、心臓が痛み始めた。
重い、痛い。


「……そうだよ、全部あたしが裏で皆に言ってたんだよ」


切なそうな顔をしていたかと思ったが、次には見下したような顔をする。


「ラビ先輩とあんたが一緒にいたって聞いて、ムカついて。バンビ君とも仲良くなって面白くないって言ってる子大勢いたから、だから皆で虐めてやろうって」


人の名前を覚えるのは得意じゃない。
言い訳に聞こえるかもしれないが、彼女が好きな人が雪兎だとは知らなかった。
だが知らないうちに彼女を傷つけてしまったのは事実だ。
その結果、ああいう嫌がらせ行動になってしまったのだろう。


「それにね、なんであたしが“嫌われ者”のあんたと一緒にいてあげたと思う?」


彼女を信じていた頃の私が、小さく苦しいと呟いた。


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