学園マーメイド

「ラビ先輩が、“学園のマーメイドって子の情報知りたいな”ってそう言ったからよ！だからあたしが先輩の情報の為に、あんたと“友達ゴッコ”してやったの！一回もあんたの事、友達だなんて思ったことないから」


ここで泣き崩れてしまうのが、“人間”だとしたならば、私は“サイボーグ”なのだろう。
涙が出るどころか、光から一瞬たりとも視線を逸らさなかった。
彼女の口から出る真実を心の中に埋めるのに必死で。
彼女がどれだけ苦しんだんだろうと考えるのに必死で。
それでも、その苦しみは私には分からない。
一つだけわかったのは、光が“偽り”だったと言う事実だけ。
光は小さく呻くと、先ほどのように顔を歪ませて苦しそうに言葉を紡いだ。


「大っ嫌い！あんたなんて、大っ嫌い」


光の大きな瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
重い。全身に圧し掛かる感情が重い。
重い、そして痛い。


「……そっか、そうだったんだ」


光がこんなにも苦しんでいたなんて知らなかった。知らなかったで済まないだろうけど。
綺麗事を言うつもりなんてない。
ごめんね、辛かったよね、と言ったところで彼女が納まる保証もない。
そしてそれがこれから彼らと一緒にいられなくなる理由にもならない。
私はこれからも彼らとは一緒にい続けるのだと思うから。


「あんたなんて……、あんたなんてっ！」
「よく分かった。……分かったよ、光」


本当は分からない。あんたの気持ちなんて、分からない。
嫌がらせによって、憂さ晴らしができたのか分からない。
憂さ晴らしをする事が本当にいいことだったのか分からない。
ただ、そこまでするのは私が大嫌いだと言う事なんでしょう？
その気持ちは分かった。
涙が痛いほどそれを伝えている。