学園マーメイド


自分がどんな表情をしていたのかなんてものは知らない。
周りの部員達がどんな顔をしていたのかも知らない。


後ろを振り向いて、部室を出ようと足を動かしたとき、何故か地に足が着いていないようなそんな感覚がした。
気持ち悪い感覚だ。
……もう、ここには用はない。
ゆっくりとした足取りで部室を出て、静かにドアを閉めた。

居た堪れない思いが体中を支配して、それを押さえつけようと長く続く廊下を走り出した。
走って走って、向かったのはプール。
荒い息を整えないまま、制服を着たまま、水の中にダイブした。
バシャン!大きな音を立てて、水しぶきをあげる水。
水の中は相変わらず自分の心音と水音だけ。
なのに、全然落ち着かない。いつもみたいに安心できない。


「…………」


潜って潜って、一番深い場所まで潜ると、口を開けて声を発した。
ゴバホバホボ、声にならない泡が口から飛び出し、泡は上へとあがって消える。



――――『それにね、なんであたしが“嫌われ者”のあんたと一緒にいてあげたと思う?』



痛い痛い痛い、痛い。



――――『先輩の情報の為に、あんたと“友達ゴッコ”してやったの!』



“友達”だと思っていた。そう思いたかった。
笑いかけてくれていた彼女も、心配してくれた彼女も、楽しそうに先輩の話をする彼女も。
全部、信じたかった。



――――『一回もあんたの事、友達だなんて思ったことないから』



感情なんて、邪魔なだけ。
昔の自分ならばこんなにも感情的にならなかったはずなのに。
苦しい苦しいと胸の奥が悲鳴を上げている。
この声を今の自分は無視できない。



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