学園マーメイド


「ゴパゴポゴ……、ゴパゴポポガポ(友達だと……、信じていたかった)」



声にならない声は、泡になって消えていく。
それでいい。
こんな声は誰にも届かなくていい。
泡になって消えていくのが丁度いい。
私自体泡になって消えてしまうのがお似合いなのだ。


生まれ変われるなら、魚になりたい。
泳いで泳いで、深い海と同化して。
泡になって消えていけるなら、それが一番幸せだと思うんだ。


このまま水の中にいようか、そう思っても私は魚じゃない。
息の苦しさに耐えられなくなり、足は地上に向かう為に動き出す。
バタ足を繰り返し、地上に出るといっぱいの酸素が広がる。
その酸素を精一杯吸い込む。……魚ではなく人間だから。

――――ちっぽけな人間だから。

それでもこの中は私を受け入れてくれる。
人間の自分を包み込んでくれる。私の生きる居場所、私の生きる意味。
そう、それだけあればいい(そう思えなくなったなんて)。
そう、それが存在理由なのだ(それ以外にもあるだなんて)。
苦しくなる胸奥を無視して、泳ぎだす。
制服が重いと感じると同時に、心臓の奥も重いと感じる。
与えられた感情は、水の中でさえ動きを鈍らせる。
あんなにも軽かったこの空間がずしりと重く、私を動かせなくする。


「……は、……はあ」


泳ぎ続けば、魚になれる?
こんなに呼吸が苦しくなる必要もなくなる?
水は何も答えてくれない。ただ私の体を包み込み、静かに波打っていた。



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