学園マーメイド

「いや、あのね。今のはつっこんでもらわないと…、俺が恥ずかしいから」
「え!…ごめん」


多分自分を“可愛い”と言ったところに何か言って欲しかったのだろう。
お笑いは好きだけど、ボケとツッコミならアンタは確実にボケだよ、と何度が光に言われた事がある。
その理由が分かった気がする。
両手を合わせて謝る私にバンビは未だに顔を赤くしながら笑った。


「マーメイドはよく天然って言われるでしょ?」
「さあ、自分の性格についてそんなよく考えてないし」


抜けているとは思うけど、そこまで馬鹿ではないと思う。
自尊し過ぎだろうか。
沈黙が流れたので、何も言わずプールの壁を蹴りだすと自由形で泳ぎだした。
手をかき出すときに分かる、水の重み。
それをしっかりと感じながら何度か水面に顔を出して息をする。
幸せな時間だと思う。
50メートルあるプールをUターンし、帰ってくるとバンビの姿はなく、塩素の匂いと機械音が耳に入り込んできた。



自分の中の違和感がどんどん、どんどん膨らんでいって。
でも一体この違和感の正体が何なのかは分からなくて。
バンビと出会ってあっという間に1週間が過ぎていた。


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