学園マーメイド

他愛のない会話、陸嵩の隣。
それが当たり前になってきていて、それがないと落ち着かないとも思える。
それに加え、雪兎や梅沢の存在も大きくなってきている。
だれかに支えられて生きている。
弱くなったのとは違う、新しい自分。



「そう言えば、何で水だめなんだっけ?」
「んー、昔兄貴に海に沈められたんだよね。たぶんそれ」
「トラウマだ」



彼は苦い顔をして頷いた。



「そ。子供同士のじゃれ合いだったんだろうけど、本当に死ぬかと思ってさ。それから水に入ると足がつるようになっちゃって」



自分には考えられない感覚なので、それがどう言うものか分からない。
だが彼が水に入ったときの事を考えると重度のトラウマなんだろう。



「だから小学校、中学校と水泳だけは足つくプールじゃないとだめだった」
「ああ、うちの学校のプールは大会と同じ深さだからね。……一番深くて3メートルだったかな」
「……3メートル……。やっぱ蒼乃すげえや」



今更何を言うのだろうか。
陸嵩は感心したように何度も頷いて見せた。
それを言うならそっちだって凄いだろうに、と言いかけてやめる。
短距離、中距離、長距離。ハードル、高飛び、幅跳び。
どれも平均的に出来る上、そのどの競技も上位に食い込むと言う経歴を持っている。
お前のほうが超人だ、と思い心の奥で笑う。


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