学園マーメイド
「蒼乃!」
体がびくりと大きく揺れた。
雪兎の大声が飛んでいた意識を覚醒させてくれたのだ。
「あ、ああ。ごめん、ちょっとぼうっとして」
「……それ何回目の台詞だ?」
はあ、と大きな溜息をつかれ申し訳なく頭を下げる。
「風呂入ってこい。その間に布団敷いとくから」
呆れたように頭をぐしゃぐしゃとかき回され、顔が歪む。
ボサボサになった髪の毛を手で撫で付けて、持ってきたフェイスタオルを鞄から取り出し片手に抱く。
居候と言うポジションになるのだから、出来るだけ家事を手伝おう。
私もこの学園に入るまでは家の家事はやっていた。
だからそんなにいて邪魔になる存在ではないはずだ。
洗濯はしたいな、下着を見られるのはいやだ(一応乙女心)。
「なあ、本当に俺のところにきて良かったか?」
バスルームへ向かう足を雪兎の声が止めた。
後ろを向いた状態でも真剣なのが伝わる。
そしてその言葉で雪兎は私がここにいる理由を感知してるのだと分かった。
「いちゃいけないって言うのなら帰るよ」
「そうは言ってない」
「じゃあ、ここにいたい」
だとしたら、どうしてこんなにも心も体も痛いんだろう。
自問自答したって何も返ってこない。
小さく息を吸うと上下した心臓がぎゅっと縮まった。
「……じゃあ、なんで泣いてんだよ?」
その言葉に肩が震えた。