学園マーメイド
Breath...03

Breath...03



「じゃ、…じゃあ言ってくるからね」


土曜日の清清しい朝の匂い。
時計の針が差すのは5時30分。
ドアを開けると私の部屋の前で、わざと涙を流している顔をする光。
その顔を低血圧の脳で恨んだ。


「…光…、わざわざ起こさなくても…いいよ」


今日は光が合宿へと旅立つ日。
旅立つと言ってもそんなに遠い場所でもない、他県に行くわけでもない。
永遠の別れでもないのだから、安らかな睡眠を邪魔して欲しくないのが本音。


「お土産は、山の土と草。そして先輩の話ね…、分かった」
「……い、いってらっしゃい」


これに何を言っても無駄だ、そう思い早急に話を切り上げる。


「うん…、蒼乃。何かあったら電話してきていいからね」


ほとんど目が開いてない状態でも分かる、光の心配している声。
それを聞いてほんの少し目が覚める。
自分の心配をしていればいいのに、やはり無自覚なのか人の心配をしてしまう光の優しさ。
朝からそんな優しさに触れられて、気分がいいかもしれない。
私はまだ少し無意識の頭でこくりと頷いた。
ありがとう、ぐらい言えば良かったのに睡魔には勝てなかったようで光の背中を見送った(いや、寝送った)後、ベッドに入る。
そして目覚めた時には自分が光と何を話していたのかさえ、忘れてしまっていた。
時計を見ると8時。




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