学園マーメイド
Breath...11
Breath...11
『バンビは全部知ってるぞ。お前が何をされているのか、俺も梅沢もな』
知っていて傍にいたのだと、雪兎は優しい声で告げた。
なら、なお更陸嵩に会うことは出来ない。
私に危害が及ぶならば、きっと彼はまた私を庇って平気なふりをする。
そんな事をもう二度とされたくない。
他愛のない会話をしたいと思っても、それをする事によって陸嵩に被害が及ぶなら、私は彼の傍から離れるのがいい。
梅沢も、雪兎も陸嵩も、“そんなのは間違っている”と言うだろが、自分にとってそれが最善策だ。
『決着つくまで俺の家にいればいい。俺に何があっても、お前は俺のところにいろ。……俺はお前の兄貴代理だから』
その言葉がどれだけ有り難かったか。
雪兎は小さく笑って“俺はバンビみたいにやわな体じゃねえから”と言った。
ここにいることを許してくれる。
独りじゃないんだと、そう言ってくれる。
でも陸嵩がいなければ、雪兎とこんな風になれなかっただろう。
やはりどこに言っても彼の存在は大きく、強いものだと実感させられる。
今度は、私が守りたい。
私なりの方法で陸嵩を守りたい。
固く決めた決心は破られる事はなかった。
嫌がらせは言うまでもなく健在。梅沢や雪兎に被害がないだけましだが。
陸嵩とは幸いクラスが違うので授業で滅多に会うことはなく、昼ごはんは雪兎が作ってくれた弁当を屋上や部室で食べたりする事で接触を避けた。
放課後になると陸嵩は足のリハビリの為病院に通うらしく、会う可能性はゼロ。
だがギブスと松葉杖をしていると言う噂を耳にすると、嫌でも心臓が収縮し痛々しい音を立てて鳴る。
そして携帯の電源をいれると必ず一通のメールが届いている、もちろん相手は陸嵩。
優しい文面に同じように胸は締め付けられ、返信したい気持ちを抑える。
そんな時は心の中で何度も謝罪をするのだった。