学園マーメイド
「バンビ君の怪我、あんたの所為なんでしょ?」
“バンビ”、陸嵩をさす言葉に心臓が揺れた。
「聞いても、“自分の不注意だ”しか言わなかったけど、バスケ部の女子が教えてくれたよ。あんたの所為で怪我したって!」
「あんたの所為で怪我して、大会に出られなかったんだからね!」
ずき、ずき、と心臓が痛み出す。
分かっている、これは事実で、彼の怪我の原因は私にある。
それは十分過ぎるほど理解している。
ただそのことで傷ついてる陸嵩の姿を想像するだけで、胸の芯が捕まれたように苦しくなる。
「何とか言えよ!バンビに謝れ!」
悲痛な女の子の叫びが背中に刺さった。
同僚として大会にでられなかった彼を思っているのだろう。
背中越しにそれが伝わってきた。
謝って、陸嵩に赦されるのはまだ早い。
まだやらなきゃいけない事があるから、だから陸嵩に正面切って謝るのはまだ出来ない。
私は腹に酸素を送りこんで、振り向く。
目の前の険しい顔をした4人の瞳を見る。
「陸嵩が怪我をしたのはあたしの所為だ。大会にでられなかったのもあたしの所為。陸嵩は何にも悪くない」
そう、何も悪くないのに。
「仲間の人にも迷惑をかけたと思ってる。ごめん」
真っ直ぐ見つめた先の彼女達は、その言葉に視線を落とした。
そしてぐっと拳を握りしめてもう一度此方を見る。
その瞳は涙で潤んでいた。