学園マーメイド
食堂ではきっとおいしい匂いをさせているに違いない。
のそり、とベッドから這い出てスウェットを脱いでティーシャツに膝下まであるジャージを着る。
部屋を出ると光とは違う隣の部屋も同時に開いた。
目と目が合い、彼女は少し憎い目で私を見るとふい、と顔を背けて食堂へと向かっていった。
…当たり前だ、あの子は元水泳部。
あんな瞳で見られる理由は決まっている。
私は鼻から息を吸って小さく口ではくと、小さく「よし」と言って食堂への道を歩き出した。
食堂と談話室は入り口は別だが男女共通で、光がよく先輩の姿を探す絶好のチャンスだと言っていた。
結局毎回、見つけられずに終わっているが。


大勢の生徒がこの寮を使用しているから、寮は3つに分かれている。
学校からは歩いて10分と短距離にあって寝坊したときに最適な場所。
自分はツバキ寮の所属で、後の二つはヒマワリ寮、バラ寮と言うように花の名前で区別されている。
風呂やトイレ等々は共同となっている。もちろん男女別だ。



「あ、マーメイド!」


食堂の扉を開け、朝はやっぱり和風にいこうと思ってご飯を盛っている最中の声。
聞きなれてしまったその声に驚きはしなかったが、焦ったあまり炊飯器の中にしゃもじを落としてしまった。


「…おはよう、バンビ」
「おはよ。同じ寮だったんだ、びっくり」


熱い炊飯器の中に手を突っ込みながら、そう言えば同じ寮だと言う事を今まで気づかなかったなと思った。
多分、学校で顔を合わせたのが初めてだったから、ここで見ていたとしてもただ分からなかっただけだろう。


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