学園マーメイド
「謝って済む問題じゃないんだよ?」
「あんたは知らないだろうけど、リハビリとかすごい頑張って大会に出ようと必死で!先輩とかにいい気味だとか言われながらもすごい頑張ってさ」
ああ、陸嵩ならそうするだろうと思っていた。
努力を絶やさない。誰かの見えないところで頑張る人なんだと分かっていた。
だが事実を前に突きつけられると、陸嵩のその姿を浮かばせて切なく思うしかなかった。
心臓が痛む。
「リハビリが終わった後とか、一人で泣いてたりするのを見たって子もいたし」
大会に出られない悔しさなんて、計り知れるものじゃない。
悔しくて、苦しくて、今まで積み上げてきた努力も何もかも水の泡になる無気力感に襲われて。
苦しかったんだ、陸嵩も。
保健室で苦しそうに泣いた彼の声が耳の中でループする。
どれだけ悲しかったのだろう、苦しかったのだろう。
変わってあげたいなんて無責任なことは言えない。
でも同じように彼の痛みを知りたいと思った。
少しでも知りたいと思った。
それが無理なのを知っているから、陸嵩を避けるしかなかった。
……陸嵩は愛されている。
たくさんの友達や先輩に囲まれているから、きっと寂しくない。
挫けそうになってもそんな人たちが支えてくれると思った。
そしてやはり彼は愛されていた。
「あんたさえいなければバンビ君は……」
ほら、陸嵩を思って泣いてくれる人がいる。
それだけ分かればいい。
陸嵩が寂しかったり、悲しかったりする思いが少しでも紛れればいい。
それだけで、……いい。
私は一人ひとりの瞳を見つめ、最後に小さく頭を下げた。
「ありがとう」
色んな意味を込めた感謝の言葉を伝えると彼女達は目を丸くした。
それを最後に見て、彼女達に背中を向けて玄関を後にした。