学園マーメイド

ずしり、心臓あたりが重い。
鉛玉みたいなものが乗っかっているみたい。
……こんな痛い気持ちなんて陸嵩が味わった苦しみに比べたら小さい。
こんな気持ちになってはいけない。



「…………大会でたかっただろうな」



ぽそりと呟くと、更に心臓の鉛が重たくなった。
ぎゅっと心臓あたりを押さえつけ、前を向くと一台の車が見えた。
その車が川上のだと気づくのに時間はかからなかった。



「蒼乃ちゃん」



笑顔の川上が窓から顔を出して此方に手を振った。



「…………」



この時の私はおかしかったんだ。
大嫌いな人の笑顔でさえ、大丈夫だよと言っている気がして、絶対に車に乗るものかと言う決心があっさりと敗れてしまった。
川上に一礼して助手席に乗り込む。
甘いミントの香りがした。エンジン音が響き、車が発進する。



「最近寒くなってきたな。風邪引かないようにね」



頭の中でループする陸上部員たちの言葉。
陸嵩に謝る事さえもできない自分の不甲斐なさ。
私と彼の前に立ちふさがる一枚の重たい壁。
……雪兎も梅沢も、顔や言葉に出さずとも心配している。
何も出来ず一歩も動けない自分がいる。
情けない。



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