学園マーメイド
「……あー、蒼乃ちゃんってやっぱり俺の事嫌い、だよな?」
嫌い?
ああ、大嫌いだよ、こんな自分。
今すぐ抹消されたいとさえ思う。
だけどそんな事をしたらこの罪からも逃げることになる。
そんなのは本当の卑怯者だ。
「……大嫌いです」
「あ、やっぱり」
「こんな自分」
「あ……?自分?」
車が赤信号で止まる。
「何をするにも誰かに迷惑をかけずにはいられない。自分で招いた結果を自分で解決する事ができない」
いつも気にかけてくれた人に、“好きだ”と言ってくれた人に、何も返すことが出来ない。
面と顔を見て、謝ることもできない。
簡単に赦して欲しくない。
掌を膝の上でぐっと握る。
「大嫌いです、こんな自分」
言い聞かせるようにもう一度言葉を吐く。
青信号になり車が発進する。
「迷惑かける事っていけない事なのかな?」
川上が落ち着いた声で言った。
横顔は少しだけ微笑んでいるような、でも真剣な表情のような。
私は沈黙を守った。
「俺はこの年になっても誰かに迷惑かけてるよ。……蒼乃ちゃんは誰かに頼るって事を誤解してるんじゃないかな」
「誤解?」