学園マーメイド

「うん。頼るイコール迷惑じゃない」



頼ることによって、誰かに迷惑がかかる。
でも、それは違うのだと彼は言う。



「頼るって、その人を信頼してるからだろう?頼られる方は結構嬉しいんだよ」



エンジン音が耳の奥を木霊する。
私は人を知らない。
自分以外の人間には興味がなかったし、今更しようとも思わない。
だけど感情があるのだと気づいてから、少しずつ何かが変化してきてもっと知らないことが増えた。
“頼る”って迷惑ではない?
でも、陸嵩はその所為で怪我を負ったのだ。
迷惑以外の何でもない。



「……後悔は後悔を生むだけって有名な言葉知ってる?俺もね、後悔に後悔を重ねた。だけど、後悔は後悔だけじゃなくて、“希望”も生んでくれるんだよ」



川上のハンドルを握る手に力が入った。



「この後悔を次回に生かせるような希望も生んでくれる。……自分の気持ちを押し殺して生きるのは辛いだろうし、苦しいよね。でもね……」



赤信号でもないのに、車は横に反れて止まった。
1台の車がその横を通り抜けて行く。
どうしたのだろうと川上を見ると、川上が真剣な表情で此方を見ていた。



「自分の気持ちを押し殺すぐらいなら、後悔をしたほうがいい」



瞳の奥に宿る光が弱い私を、逃げようとする私を見つめる。



「逃げ出すくらいなら、それに体当たりしてボロボロになったほうがいい」



川上の瞳を見つめ返す。


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