学園マーメイド
深い溜息をついて、廊下を歩く。
ふ、と外の風景が飛び込んできて、真っ赤に燃えるような夕日が目に入る。
細めてみると、そこには陸上部が練習をしている。
――――……惹き付けられるように陸嵩を見つける。
息が止まりそうになる。
「……足治ったのかな」
誰よりも速く走りぬける彼の姿は綺麗で、勇ましかった。
そんな陸嵩の大事な大会を奪ってしまった訳だ。
嫌がらせに巻き込んで、こんな事態を招いた自分が憎くてしょうがない。
立ち止まった足を動かそうと前に出した、が。
「園田さん」
前にいる人物によってそれを停止にさせられる。
「梅沢くん」
短パンに部活用のユニフォームに身を包んだ梅沢が、オレンジ色に染まっていた。
片手にはスポーツ飲料が握られている。
どうやら幅跳び選手は休憩の時間らしい。
「…………」
「…………」
お互い沈黙が痛い。
「……園田さんっ、あの!か、神崎さんのこと」
“神崎”、光の苗字に心臓がどくりと揺れたが一瞬にして冷静を取り戻す。
梅沢は禁忌を口にするかのように、言葉を選びながら声を発しようとする。
雪兎の言葉を思い出す、梅沢も陸嵩も光が嫌がらせの実行犯だったのを知ってると言う事。
私は小さく笑って見せた。
「仕方ないよ。光の好きな人を忘れたあたしも、そしてそれを嫌がらせで憂さ晴らしをしようとした光も、どっちもどっち」