学園マーメイド


「……バンビ君がね」



光の名前を聞いたときよりも心臓が跳ねる。




「園田さんが神崎さん達の悪事を知る前にね、バスケ部の女子に言ったんだ」
「陸嵩が?」
「うん。“こんな嫌がらせになんの意味があるんだ。卑怯なやりかたは嫌いだ”って。……バンビ君は女子の皆に人気あるでしょう?嫌われたくないと思った女子たちがちょっと嫌がらせをやめたみたい」




そう言えば、一時期から下駄箱に入っているゴミの数が極端に減っていた。
……そうか、あれは陸嵩だったのか。
また、守られてしまったのか私は。
それなのに私は。
罪悪感が胸中を締め付け、奥がぎゅうっと痛くなる。
好きな人に守られるのは嬉しいと同時に、こんなにも苦しくなるものなのか。
一方的に守られてばかりで私は彼を守ってやることもできない。
情けない。
私は俯いた。梅沢の瞳が見れなかった。




「……独りで……抱え込まないでよ」




上から降ってきたのは頼りなく、震える声だった。
泣いているように聞こえる(顔はあげられない)。




「園田さんが、何か考えてるのは分かるよ。独りで解決しようとしてるのも分かる」
「梅沢、くん」
「でもね!ぼ、僕や、バンビ君やラビ先輩は頼って欲しいんだよ。離れられる方がずっと、ずっとずっと……苦しいし悲しいんだよ」






――――『頼るって、その人を信頼してるからだろう?頼られる方は結構嬉しいんだよ』




川上の言葉が頭に響いた。
苦しめたくないから、離れたの。
悲しい思いをして欲しくないから、離れたの。
それが、逆に苦しめていた?
苦しいし、悲しい思いをさせていたの?




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