学園マーメイド


私はゆっくりと顔をあげてオレンジ色に光る梅沢の瞳を見つめた。
彼の瞳からは大粒のオレンジ色の涙が零れ、頬をぬらしていた。




「独りで、抱え込まないでよ……っ」




梅沢の瞳が濡れる。




「また、4人でご飯食べたいよっ!」




じん、と入り込む言葉。
あの空間が好きだった。なんだかんだ言いながらも煩く食事をしたり、雑談したりするあの空間が。
離れてみて分かったんだ。
あの場所は水泳と同じく輝いて綺麗で、ここにずっといたいと思わせてくれるんだって。
だけど気づいてからでは遅いと思った。
遅いと、思ってたんだ。
梅沢がそう言ってくれるまでは。




「……食べよう」




ぼそり、と自分でも小さいと思うくらいの声で呟いた。
……勝手に飛び出した言葉だった。




「え?」
「食べよう、ご飯」
「園田さん……っ、うん!食べようよ」



しっかりとした口調で告げると、彼は嬉しそうに笑った。
……久しぶりだ、こうして笑顔を見るの。
嬉しくてつられて笑いそうになるんだ、いつも、いつも。
私は鞄を持ち直して笑った。




「今すぐは、無理なんだ」
「え……、な、なんで?」
「……あたし、今泳ぐ力なくしちゃったから」




力なく瞳を伏せると、梅沢が驚いて息を荒く吐いているのが聞こえる。



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