学園マーメイド
どうして、と聞き返される前に口を開く。
「水が怖い、それだけ。……今はこれが私の中で一番重要な事」
だから、と付け加える。
「頼りたいけど、これは私が解決しなきゃいけない事だから。……だから、ご飯はまた今度」
瞳を開けて笑う。きっと作り笑いだと分かってしまうのだろう。
だが、笑っていなければ此処にいる私が崩れ落ちてしまうのではないかと思った。
強く虚勢を張らなくては立っていられない。
梅沢は酷く悲しそうな顔をしていた。
そしてそれ以上なにも言うことができなかったんのだろう。
口を噤むと、俯いた。
私はひらり、と手を振る。
「これから用事があるから。……部活、頑張って」
止まった足を再び動かす。
立ちすくむ梅沢の横をすっと通り抜けて玄関へと向かう。
「園田さん!……さようなら!」
泣いたように掠れた声が背中に突き刺さる。
進む足は止めなかった。
振り返らずに声を発する。
「さよなら」
まるで永遠の別れのような挨拶に、漏れたのは苦笑いだった。