学園マーメイド

美味しいご飯を腹いっぱい食べて、満足しつつ部屋に戻ってベッドに倒れこむ。
ベッドは二段あるが相手がいない為、上は荷物置き場と化している。一つだけの机と棚と、ローテーブル。
本当は二人用、つまり相部屋の子がいるのだが現在一人の私にとって、12畳分あるフローリング部屋はとても広く感じる。
でもこれは寮編成から決まっていた事で、誰かが嫌で出て行ったと言う事ではない。
出て行かれたらそれはそれで寂しいけれど、どちらかと言えば一人であり難かったかもしれない。


「…あー、課題しなきゃ……と、その前にバンビか」


重たい体をベッドから起こし、ぴょんと跳ねたくせ毛を撫でる。
取り付けの約束もない、しょうがなく談話室へと向かうことにした。



今日の昼はテラスでいつものミルクココアを飲みながら(ちょうど光もいないことだし)、ゆっくりと本でも読もう。
他愛のない事を考えているうちに談話室の入り口へと到着。
ひんやりとしたドアノブに手をかけ押すと、ソファーに座り和やかそうな顔をしたバンビがいた。
…そう言えば談話室に来たのは入学式以来だ。


「お、来た来た!」
「…あ、ども」


談話室の暖かな雰囲気に感動しつつ頭を下げる。


「場所言ってなかったからさ、どうしようかと思ってたけど。なんか以心伝心って感じ?嬉しいなあ」


ケラケラと笑うその顔。
今まで、いや今さっきまでなら違和感が胸を占めて不思議に思っていたがそうはいかない。
どうやら私の本能は結構役に立つみたいだ。



「…ねえ、本当の目的は?」



その言葉を吐いた時、しん、と空気が静まり返った。


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