学園マーメイド
大きく息を吸って深呼吸。
水面を見つめて、もう一回深呼吸。
ずっと考えてた、ずっと思っていた。
どうして怖いのだろうかと、どうして兄を感じられる愛すべき場所を恐れてしまうのだろうと。
最初は“水が私を拒否するから、閉じ込めるから”と思っていた。
だけど、それは違うんじゃないのだろうか。
私が彼らを拒否しているから、彼らも私を拒否するんではないだろうか。
「……あたしが怖がっているから、受け入れてくれない」
そうだとしたら、私がするべき事は決まっている。
“恐怖心”がないとは言えない。水面を見て吐き気がなくなった事は進歩だと思うが、飛び込むことに完全に恐怖心がないとは言えないのだ。
だけど、もう前みたいに怖いと思って逃げ出す私じゃいられない。
とくにこの場所からは逃げ出してはいけない。
「兄さん……、もう一度泳ぐよ」
あなたと生きるこの場所をしっかり抱きしめて歩き出すと誓ったから。
「見ててね」
あなたがいなくなったあの日から、ここで生きると決めたから。
ここから逃げ出すって事は兄からも逃げ出すことになる。
そんな事はしないよ。あなたはいまでも私の光なのだから。