学園マーメイド
Breath...13
Breath...13
「優勝、園田蒼乃」
名前を呼ばれ、表彰台に上がる。
「園田蒼乃殿、個人平泳ぎにおいて大変優秀な――――……」
トロフィーと賞状を受け取り、握手を交わす。
すると湧き上がる拍手と歓声。
それを瞳で追うと、嬉しそうに笑う梅沢、雪兎、そして陸嵩の姿が見える。
私も笑顔になるしか他なかった。もちろん作った笑いではなく、本物の笑いだ。
今まで、このトロフィーや賞状は自分のためにあるものだと思っていた。
だけど今は違う。
この支えてくれた人たちがあったからだ。これは、彼らのものでもある。
私は最高の笑顔を見せトロフィーを掲げた。
陸嵩に思いを伝えた後、お互い濡れた体を拭きながら笑ったり、泣いたりを繰り返した。
それからたくさん話をした。
知っているとは思ったが、陸嵩から離れた理由や、光のこと。
溺れて泳げなくなったこと、川上のこと、他にもいろいろ。
その度、陸嵩は頷いたり相槌を打ったりしてくれた。
大会の事を謝ろうとしたが、陸嵩はそれを静止した。謝る必要なんてないのだと、笑って。
陸嵩の話も聞いた。
足のヒビは本当にほんの少しだけで、1ヶ月絶対安置していれば完治するものだと言う事。
だけど、リハビリをしてちょっと早く部活に復帰したこと。
光のこと、嫌がらせのこと、私のこともたくさん話してくれた。
『……蒼乃が帰ってきてるんじゃないかと思って、毎日夜に蒼乃の部屋に行ってたんだ』
照れくさそうに言った陸嵩を笑ったのは言うまでもない。
それと、なんで泳げないのにプールに飛び込んできたのか、と聞いたら、
『梅から泳げなくなった事聞いてさ、なんかいてもたってもいられなくて。部活前に少し覗いていこう、って思ったら蒼乃が水の中に飛び込んで、暫く浮いてこないんだもん。溺れたのかと思って……、それで』
そう言って、恥ずかしそうに俯いて頭をかいた。